スキップしてメイン コンテンツに移動

道具の良さを引き立てるために


私は、背が高くて手足が長く、かといって筋肉もないので、いってみれば「ひょろっと男子」です。でも、その手足のリーチのおかげで、他の人と同じような点前を披露しても、なぜか「立派そうに見える」ことだけは誇っています(笑)。また、手指が細く長いこともあり、よく言えば「優雅に」、冗談めかして言うと「ちょっと女子っぽい?」指の動きで、人々が勝手に感動してくれることがあります(笑)。これまでコンプレックスだった体型が、茶道では有利に働く場面もあるものだと感じています。


茶道具についても同様に、形は様々ですが、点前座にいる私がどのように彼らに触れ、使っていくかで道具の見え方が変わります。使い方次第で、茶道具の美しさを引き出すことができるのです。


例えば、釜から湯をすくう際に使用する柄杓は、円筒状の先端(合:ごう)と取っ手(柄)から構成されます。簡単に言えば「長さのあるおたま」のような形状ですが、柄杓を手に取るときには、できるだけ柄の端に手を添えることで、華奢な柄杓を細く長く見せ、まるでパリコレのモデルのようにスタイリッシュな印象を与えることができます。


一方で、丸みのある茶器に関しては、宝玉を扱うようにゆったりと手のひらに置くことで、その丸みが強調され、愛嬌のある美しさが引き立ちます。


石州流では、このような「道具の見せ方」を意識した作法が多いことも特徴的です。師匠からは、私自身の体型、特に手指の長さは、お点前中に道具をよく見せるための「必殺武器」だと言われています。というのも、柄杓や茶杓のような長さのある道具を取り扱う際、私の長い手指も相まって「道具が生きているように見える」とのこと。それを活かして、自分なりの「優雅な点前」を完成させなさいと、師匠からはしょっちゅう言われています。


茶室という舞台では、主役の茶だけではなく、茶道具も大切なキャストとして引き立たせる役割をお点前さんが担っています。私の場合は親譲りの手足と指の長さを活用していますが、他のお点前さんにもそれぞれの個性があります。それでも、道具をキャストのように扱うことに変わりはありません。


茶席に呼ばれるようなことがあれば、お点前さんがどのような演出をしているのかという点にも注目してみてはいかがでしょうか。

コメント

このブログの人気の投稿

Shaolin Temple Europe: Exploring the Intersection of Tradition and Modernity

In the heart of Germany lies a haven of ancient wisdom and martial arts mastery: Shaolin Temple Europe . My recent trip to Germany, accompanied by a friend who is a licensed Qigong trainer, led us to this remarkable place. For her, the opportunity to delve into the teachings of Shi Feng Yi , the esteemed headmaster of Shaolin Europe, was a dream come true. Visiting the temple was the pinnacle of our itinerary, and after much anticipation, we finally set foot within its hallowed grounds. Although Master Shi was away on a journey to spread his profound knowledge of Qigong and Gongfu across the globe, our disappointment was quickly dispelled by the warm welcome we received from a monk named Miao. Miao, hailing from France, exuded a serene aura that spoke volumes of his dedication to monkhood. His very name, bestowed upon him in the tradition of Buddhism, hinted at the depth of his spiritual journey spanning several years. Despite Master Shi's absence, Miao graciously guided us through...

A Culinary Journey Through Germany: Exploring Delicious Delights

As I reflect on my recent trip to Germany, one aspect stands out prominently in my memory: the exquisite culinary adventure I embarked upon. From hearty classics to delicate specialties, each dish I encountered left an indelible mark on my taste buds and fueled my passion for exploring global cuisines. Join me as I recount my gastronomic journey through the flavors of Germany. Schnitzel: A Crispy Classic The journey began with the iconic Schnitzel, a dish synonymous with German cuisine. Thinly pounded meat, typically veal or pork, coated in breadcrumbs and fried to golden perfection, Schnitzel embodies simplicity and satisfaction. Each bite was a harmonious symphony of crunch and tenderness, leaving me craving for more of this timeless delight. White Asparagus with Hollandaise Sauce: A Springtime Sensation Intrigued by seasonal specialties, I indulged in the delicate flavors of white asparagus paired with velvety Hollandaise sauce. Asparagus, celebrated as a springtime delicacy in Germ...

痛いのではない、痛みを思い出しただけさ

Gregory Maxwell - From File:Yin yang.png, converted to SVG by Gregory Maxwell., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=364239による 歌手の宇多田ヒカルさんが、自身のインスタライブで視聴者からの質問に答えていた時のこと。海外ファンから、「なぜ大切な方との関係が終わった時に、心が痛むのか?」という、答えに窮するような質問がありました。宇多田さんはしばらく考えた後に、その質問に対して、このように答えるのです。 「その痛みは、もともと持っていたものじゃないのかな。それで、その人との関係は<痛み止め>みたいなもので、その間痛みを忘れていたというか。だから、関係が終わった時に痛みを思い出したのだと思う。」 (宇多田さんは英語で回答されていたので、内容を意訳しております。) ヒット曲を連発する宇多田さん、その感性に改めて脱帽しています。 宇多田さんがご存じなのかどうかわかりませんが、この考え方は易経にある「陰陽」の考え方に通じるところがあります。万物は、常に陰陽、2つの正反対の側面を持つというものです。 太極図 冒頭の陰陽マーク、ご存知の方も多いのではないでしょうか。 黒は陰、白は陽を現し、一つの円に勾玉のような形で陰陽が描かれています。また、陰陽ともに同じ面積であり、一つのものには、1:1の比率で陰と陽がセットになっているという、易経が最も重視する考えを端的に示した図です。 宇多田さんの例をとると、痛みは陰、大切な方との関係を陽としたときに、陽にいる間、もともとの痛み(陰)を忘れていただけ、という見方ができます。   このマーク、正式には「太陰太極図」と呼ばれています。 大いなる陰が大きく極まった時の図、と解釈できますね。 宇宙や海底、母親の胎内。生命が始まった場所はすべて光の届かない闇。「 陰 陽」であって「陽 陰 」ではないことからも、闇の上に光が存在していることがわかります。闇が極まった時、光が誕生する。この「陽転」とよばれる瞬間を切り取ったのが、太極図なのかもしれません。 光ばかり注目される世の中。 多くの人が、物事の良い面ばかりを追いかけていきます。 でも、「光があるから闇」ではなく、闇の中にい...