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5月, 2020の投稿を表示しています

ウィルスと疫病、そして節分と鬼

COVID-19の影響により、今年の祇園祭の山鉾巡行が中止になったとの報道に接しました。祇園祭の山鉾といえば、京都の夏の風物詩。準備していた関係者の皆様にとってはつらいことと察します。 祇園祭はもともと、八坂神社が疫病封じのために始めた仏教的な儀式(御霊会)が由来とされています。当時の人々は、得体のしれない病を神の祟りだと思い、祈りをささげることで平穏無事な生活を維持しようとしたのだと思われます。(詳しくは、 こちら をご参照) 似たような疫病封じの神事は全国各地にありますが、初夏~盛夏にかけての時期に集中しています。夏は暑いから、疫病が発生しやすいのでしょう。 一方、2月3日の節分といえば、「鬼は外、福は内」と唱えながら、鬼に豆(大豆)を投げつけて魔を払う豆まきが風物詩です。このまいた豆を、後で食する慣習についても、ご存知の方が多いのではないかと思います。 さて、この鬼さん。一説には、インフルエンザを含めた風邪ウィルスのことを指している、とも言われています。確かに、毎年、節分前後からインフルエンザの流行が始まります。また、「風邪をひく」とあるように、邪気を体内に引き込んでしまうという考えからか、古来、人々は経験的に「夏の疫病」とは異なる存在として、これらを「鬼」として恐れていた、とも考えられます。 というのも、夏と冬で人々がとるアクションが異なるからです。夏の疫病は「神の祟り」なので、神様を鎮めるという受動的で消極的なアクションであるのに対し、冬の風邪は「鬼」なので、豆を投げつけて追い払うという、能動的で攻撃的な姿勢が鮮明であり、人々が夏と冬で態度を使い分けていたように見受けられます。 「鬼」というのは、もとは「朝廷に従わない人々」への蔑称でした。岡山の吉備津神社に今も存在すると信じられている鬼(湯良)も、かつて製鉄技術によって一大勢力を誇り、大和朝廷に最後まで抵抗した吉備族の頭領を指すとの説もあります。 私見ですが、「鬼」は、「魂」や「魂魄」という、我々自身の根幹を示す漢字にも表れていることから、本質的には我ら(魂/魂魄)と同じであるが、何らかの理由で区別せざるを得なかった存在ではないかと思います。 こう考えると、「風邪=自分たちの邪な部分」を何としても追い払いたい、という強い意志が、豆を投げつけて鬼を退散させ

「言挙げ」と「言い切らない」、そしてコロナ

COVID-19感染に関り、米国ニューヨーク州のクオモ知事の活躍ぶりが報道されていますが、彼による最大の貢献は、ウィルス感染防止の対策に、科学的見地だけでなく、社会学アプローチも必要であるということを、世に示したことにあると思います。 ニューヨークの感染者が増加の一途をたどる大きな原因は、移民を中心とした貧困層に十分なケアが行き届かないことにあります。彼らは、十分な医療サービスが受けられず、また外へ働きに出かけなければ生きていけない。さらには、住居も衛生的とはいえない環境に置かれているとみられています。彼らがもし暴徒化し、街を占拠するようなことになれば、言い方はかなり悪いですが「歩く感染源」になりかねない。 クオモ知事は、ニューヨークのこうした状況を世に知らしめ、彼らをケアするために十分な財源が必要であると、ひるまずにトランプ政権、そして世界に訴え続けているのです。 日本でも同じアプローチが必要ですが、強制力と経済的な補償が不十分な緊急事態宣言によって、うまく作用しているとは言い難い状況です。その原因の一例として、日本人の中で慣習として息づいている「言挙げをせず」、「言い切らない」文化があげられると思います。 言挙げをせずとは、要するに「反論しないこと」です。日本の神話には、ヤマトタケルが伊吹山で遭遇した一匹の大きなイノシシに対し、その正体が神だと知らずに傲慢な言葉を投げつけた結果、呪われて死に至るというエピソードがあります。 このヤマトタケルの行為を「言挙げ」と呼び、神様には逆らってはならないという意味で「言挙げをせず」という考えが生まれました。もっというと、「起きたなら、文句言わずに、受け入れる」という考えに通じており、東日本大震災の時にも世界的にびっくりされましたが、自然災害が起きても、平静にしつつ、その変化に自分を適応させていく日本人の心に根付いているのかもしれません。 言い切らない、というのは、言葉に霊力があるとみる「言霊」の考えに通じています。以前、 「祝いと呪い」という記事 で紹介しましたが、言葉は人を祝う力も呪う力も宿します。同時に、「中庸を行く」ことが貴ばれる古くからの精神も相まって、特に何か決断する時に、よく言えばすべての人に当てはまるように、悪く言えばあいまいな表現(=言い切らない)で纏めてしまう。COVID-19対策に