茶道を習っていると、ごく自然に日常の中で使うようになる「茶筅」という言葉。今回は、その茶筅について、改めてご紹介したいと思います。
茶筅とは?
茶筅は、抹茶を点てるときに使う道具で、茶碗に入れた抹茶とお湯を混ぜ、泡立てながらなめらかに仕上げるために使います。素材は主に竹で、1本の竹から何十本、何百本にも細く裂いた穂先を手仕事で整え、糸で形を整えて作られています。
奈良県の「高山(たかやま)」という地域が茶筅の名産地として有名で、高山茶筅は多くの流派で使われています。
糸掛けとは?
茶筅の中心部には「糸掛け」と呼ばれる部分があります。これは、裂いた穂を整えるために巻かれている糸のこと。この糸掛けによって穂が安定し、茶を点てる際のバランスも保たれます。
ほとんどの茶筅では、この糸掛けの糸に黒色が使われています。理由のひとつは、茶筅が直接抹茶に触れるため、使用するうちにどうしても汚れが目立ってしまうから。黒色だと、その汚れが目立ちにくいという実用性があるのです。
石州流の茶筅は「白」
私が学んでいる石州流では、糸掛けの糸に白色を使います。これは、単に色の違いではなく、**「潔白」**という意味を込めたもの。
汚れを隠さない。だからこそ、汚さないように点前を洗練させるという、美意識がそこにあります。使う道具そのものを清らかに扱い、誠実な所作を目指すという、石州流らしい精神が表れている部分です。
茶筅の「しまい方」にも流派の違いが
出稽古などで道具を持ち運ぶ際、茶筅は茶碗の中にしまいこむのですが、このときの向きにも流派によって違いがあります。
多くの流派では、柄を上、穂先を下にして、茶碗の中に入れます(穂先が茶碗に接する形)。
ところが石州流では、柄を下、穂先を上にして収めます。これには、いくつかの意味があります。
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穂先には何も塗られておらず、使い方によってはすぐに汚れてしまう。だからこそ、「潔白である」ことをあえて見せる。
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茶筅という道具の形を考えたとき、「胴体」にあたる柄を下にした方が安定する。穂先を下にするのは、言わば逆立ちさせているようなもの。
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道具をあるべき姿のまま使うという、石州流の大切にしている価値観を表している。
このように、何気なく使っている道具にも、流派ごとに思想が込められているのが茶道のおもしろいところです。
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