茶道の世界では、茶釜から立ち上るお湯の音に特別な意味が込められています。お茶を点てる際、釜の湯がちょうどよい温度に達すると、「松風(まつかぜ)」と呼ばれる独特の音が響きます。 松風の音 「松風の音」とは、茶釜の湯が沸騰直前のほどよい温度(約88℃前後)に達したときに聞こえる、シュンシュン、ヒューという柔らかな音です。これは松林を吹き抜ける風の音に似ていることから名付けられました。この温度でお茶を点てると、苦みもマイルドに抑えつつ茶本来の甘みも引き出すことが出来ます。この絶妙な温度加減を、昔の茶人たちは音で見極めてきました。千利休も、松風の音こそが抹茶を点てるのに最も適した状態だと説いています。 お湯の温度が低すぎると、抹茶とのなじみが悪く、茶筅でしっかりなお湯となじませても、抹茶が溶けきれずダマが出来てしまいます。また、逆に熱すぎると、そもそもお客さんが飲むのに苦労するのもありますし、抹茶の渋みが引き立ちすぎてしまい、苦くてまずいお茶となってしまいます。 「いい塩梅」と松風の音 日本文化では「中庸」や「いい塩梅」といった、極端でないほどよさが重んじられます。松風の音もまさにその象徴。強すぎず、弱すぎず。偏らない姿勢が点前座にいる茶人には求められます。 また、この音が静寂な茶室に広がると、なぜか心地よく感じるものです。茶席は、茶の味だけでなく、こうした自然の演出も楽しむ「総合芸術」の要素があります。点前役にとっては湯の適温を、客人にとっては風流をもたらしてくれるのが「松風の音」です。
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