今日は新年にちなみ、初釜とその時に出されるお菓子:花びら餅についてお話します。 初釜と花びら餅 新しい年の初めに行われる茶席を「初釜」と呼び、これはお茶の世界において、非常に大切な儀式となります。 初釜の際には、新年を祝う意味も込めて、特別な茶菓子が出されます。それが「花びら餅」なのです。花びら餅は、見た目にも美しく、柔らかな餅に花の形をした薄紅色の餡が包まれています。これは新春の象徴であり、正月ならではの風物詩とも言える存在です。 特に京都では、この風習があるようですね。 花びら餅は、正式には「菱葩餅(ひしはなびらもち)」と言いまして、ごぼうとみそあんと菱形で紅色の餅を、円形の白い餅もしくは求肥を二つ折りにして包んだ和菓子です。もともとは、平安時代の宮中で、新年に執り行われた「歯固めの儀」の際に天皇に献上された食べ物が由来とされています。歯が健康=長寿であるとみなし、天皇に固いものを食べてもらって歯を固めることで、長寿や繁栄を願ったとされています。また、「宮中雑煮」とも呼ばれ、天皇や皇族方、公家などの高貴な人々にとっての雑煮としても食されていました。 現在の花びら餅は江戸時代に完成したものがそのまま継承されており、硬いどころか非常に柔らかいものです。ただ、その由来から特に新年にぴったりの茶菓子として、お正月の茶席で欠かせません。その繊細な風味と美しさは、茶の席に華を添えるだけでなく、心を和ませてくれるものです。 私自身、毎年、師匠との初釜(初稽古)では、必ず花びら餅を頂きます。しかし、稽古前に一人でゆっくりと「一人初釜」を楽しむのもまた格別です。家で静かな時間を過ごし、自分で茶を点て、花びら餅とともに自服するひとときは、心からのリフレッシュとなります。今年も、この風情ある時間を楽しみながら、日々の茶道を深めていきたいと思っています。 初釜に限らず、こうした伝統の中で感じることのできる穏やかな美しさが、新年を迎える力強いエネルギーを与えてくれます。今年も、日々の茶道とともに、心豊かな時間を大切にしていきたいと思います。
私は、背が高くて手足が長く、かといって筋肉もないので、いってみれば「ひょろっと男子」です。でも、その手足のリーチのおかげで、他の人と同じような点前を披露しても、なぜか「立派そうに見える」ことだけは誇っています(笑)。また、手指が細く長いこともあり、よく言えば「優雅に」、冗談めかして言うと「ちょっと女子っぽい?」指の動きで、人々が勝手に感動してくれることがあります(笑)。これまでコンプレックスだった体型が、茶道では有利に働く場面もあるものだと感じています。 茶道具についても同様に、形は様々ですが、点前座にいる私がどのように彼らに触れ、使っていくかで道具の見え方が変わります。使い方次第で、茶道具の美しさを引き出すことができるのです。 例えば、釜から湯をすくう際に使用する柄杓は、円筒状の先端(合:ごう)と取っ手(柄)から構成されます。簡単に言えば「長さのあるおたま」のような形状ですが、柄杓を手に取るときには、できるだけ柄の端に手を添えることで、華奢な柄杓を細く長く見せ、まるでパリコレのモデルのようにスタイリッシュな印象を与えることができます。 一方で、丸みのある茶器に関しては、宝玉を扱うようにゆったりと手のひらに置くことで、その丸みが強調され、愛嬌のある美しさが引き立ちます。 石州流では、このような「道具の見せ方」を意識した作法が多いことも特徴的です。師匠からは、私自身の体型、特に手指の長さは、お点前中に道具をよく見せるための「必殺武器」だと言われています。というのも、柄杓や茶杓のような長さのある道具を取り扱う際、私の長い手指も相まって「道具が生きているように見える」とのこと。それを活かして、自分なりの「優雅な点前」を完成させなさいと、師匠からはしょっちゅう言われています。 茶室という舞台では、主役の茶だけではなく、茶道具も大切なキャストとして引き立たせる役割をお点前さんが担っています。私の場合は親譲りの手足と指の長さを活用していますが、他のお点前さんにもそれぞれの個性があります。それでも、道具をキャストのように扱うことに変わりはありません。 茶席に呼ばれるようなことがあれば、お点前さんがどのような演出をしているのかという点にも注目してみてはいかがでしょうか。